【第一志望内定への自己PRの書き方・例文】テニスサークル編(400文字→200文字→100文字→25文字)

【ポイント】

自己PRは何回ダメだしを受けたかがすべて。第一線の社会人の視点から5回以上ダメだしを受けて初めて評価される内容になり始める。

先頭集団の就活生たちは、ダメだしをうけながら実に40回以上PRを書きなおす。
野球にたとえたら、自己PR40本ノックだ。

*2015年2月2日更新版。


【自己PRは自分にぴったりの服さがし】

 自分にフィットした自己PRづくりは、自分にピッタリの服さがしに似ている。地上でイチバン自分に似合う服を、日本国中にひしめくショップをめぐって試着しながら旅するようなもの。

 もちろん、お気に入りの服がすぐに見つかるということはまれだ。どんぴしゃりだと思った服も、翌日見直してみたら自分の求めていた一品ではない、なんていうこともある。

 早く始める人は、大学3年(修士1年)の春から1年間もの時間をかけて自己PRを完成させる。最初は夏のインターンシップエントリーシート用の自己PR。あるときは書類が通り、あるときは通らない。自分が納得のいく内容に仕上げるために、何通りもの自己PRをつくっては提出し、通過したかしなかったかによって内容を調整する。

 これまでコーチしてきた就活生の中には、一番しっくりくる自己PRが完成したのが翌年の3月、最終面接の前日だったなんていう人もいる。


【エピソードに何を語らせるか、テーマを決める。エピソードだけでは何も語れない】

 自己PRとは、たった一つのエピソードに自分を託すような試みである。

 ボクはよくエントリーシートを映画の予告編にたとえる。TVコマーシャルで流す映画の予告編なら、たった30秒くらいの時間しかない。選んだシーンやメッセージのみで全編を評価される。

 たくさんエピソードを詰め込もうと思っても、時間が少なすぎる。だからといってあらすじだけを言ってもインパクトがない。

 たとえば映画『タイタニック』。抽象的なあらすじだけを述べて興味を持つ人はどれくらいいるだろう。
 
 「処女航海で沈没した伝説の船タイタニック。そこに一組の男女の激しくも悲しい愛の物語があったのです。」

 この抽象的な説明では、心が動かず、他の映画を差し置いて『タイタニック』を見たいとは思わないに違いない。

 『タイタニック』の本編を見た人が、もっとも印象に残っているシーンは何だろう?

 誰でも覚えているシーンの一つに、沈没前のタイタニックのへさきで、主人公のローズがジャックに後ろから手を添えられて手を広げる場面がある。

 自己PRにたった一つ盛り込むエピソードは、このワンカットのようなものだ。自分の半生を代表するようなシーンを一つだけ選び出す。その場面に自分の半生を語らせる作業が自己PRづくりである。

 ただ一点注意したいのは、「エピソードだけでは何も語れない」ということである。自己PRの典型的な失敗例として「エピソードだけを書いて終わり」というものがある。それを書いた人は、アドバイザーに「何だ!これじゃ単なる『やったこと紹介』だよ。自分らしさも、得たこと・学んだことも伝わらないじゃないか!」と渇を入れられる。

 『タイタニック』に話を戻すと、前後関係を無視して船のへさきのシーンだけを言ってみても、作品について何も語ったことにはならない。

 「男女のカップルが船のへさきにいます。男性が女性の後ろに立って、女性に手を広げさせています。女性が目をあけると、飛んでいるような気分になります。以上です。」

 映画全体のテーマを伝えることで初めて、エピソードは全体を代表する役割を果たすことができる。

 「映画のテーマは、愛の力の偉大さです。
船のへさきでジャックはローズに、鳥が自由に空を飛ぶような視界をプレゼントします。
  船はやがて沈んでしまうのですが、ジャックは命がけでローズの命を守ります。わが身を犠牲にしたジャックの愛の力によって、ローズはその後の人生を鳥のように自由に生きられることになるのです。」


【自己PRが完成するまでの道のりを知れ!】

 内定者の完成形の自己PRだけを参考にするのは、連続ドラマの最終回だけを見るのに等しい。なるほどいいPRだとわかっても、どうやって完成度の高い自己PRをつくればいいのか、その方法が見出せない。

 これから、7月にボクの就職塾を受講し始めた学生・Yくんが、翌年4月、どの企業を受けても落ちない自己PRにたどりつくまでの過程を一緒に見ていくことにしよう。


●Yくんのプロフィール

 Yくんは私立大文系の男子学生。最終的に難関メーカーとユニクロに内定。インテリジェンスという人材企業の選考にも残ったが、途中辞退している。
 当時3年生だったYくんは、インターネットをサーフして私のHPにたどりつき、7月から就職塾に参加した。

 Yくんはテニスサークルの副主将だった。そのため、年内は合宿や練習の予定がぎっしり。その合間をぬって、週に1回のペースで日曜の夜に就活塾に通った。
 2月までは面接で苦戦することもあったが、3月下旬以降はピタリと落ちなくなり、4月にはユニクロファーストリテイリング)と30歳で平均年収が1000万円を超えるメーカーに内定。同時に他社は辞退して就活を終了した。


【初めてつくった自己PRは基本ボツになる】

 大学3年の夏。Yくんは自分史をつくって周囲の人の反応を見た後、3つのテーマで自己PRを作成した。

 1、メモ魔であること
 2、ボランティア経験1
 3、ボランティア経験2

<ボツになった自己PRの例文・メモ魔編>

 わたしは生粋のメモ魔です。幼少のころからシャーロック・ホームズの大ファンで、語り手となっている助手のワトスン博士がメモ魔だったことから、それを真似て始めたのがきっかけでした。

 ただの悪趣味ともいえますが、これが人とのコミュニケーション、とくに人の上に立つときに大いに役立つことに気づきました。高校2年で学内一の人気を誇るテニス部の部長に就任し、その年の新入生が100人以上入ってきたときのことです。わたしは一人一人の名前はもちろんのこと、性格、練習時の細かいエピソードに至るまでメモしました。

 わたしの同学年の部員は、口を開けば後輩の悪口ばかり言っていたので、わたしは新入生一人一人のいい部分を同級生に話してまわりました。そうするうちに、いままでいがみ合っていた後輩が、お互い「勝つためにはどうすればいいか」という建設的な議論ができる関係への変化していきました。その結果、近年不調だった我が部は、復活といわれる成績をあげることができました。

 人を観察してメモを取るということは、何気なく人と接して『感じる』だけでは気づかない一面を発掘することです。もちろん、間違ったこともありますし、絶大な効果がある訳ではありません。しかし、それで少しでも幸せになる人がいるなら、わたしはこれからもこの悪癖を続けようと思っております。

○よい点

 ・学年や人数など、具体的な数字が入っているので相対評価がしやすい。

 ・;部長であったことが書いてあり、これまた相対評価しやすい。

 ・ワトスン博士など固有名詞が入っていて、目に浮かびやすい文章になっている。

 ・後段、「得たこと」「学んだこと」が書いてある。

○改善点

 ・「メモ魔であったこと」が「チームが強くなったこと」に結びつく説明になっていない。

 ・「復活といわれる成績」では、どれだけチームが強くなったのかわからない。成果を具体的に伝えること。

 ・「わたしの同学年の部員は、口を開けば後輩の悪口ばかり言っていたので」
  →自分が所属したチームのことを悪く言わない。「この人は、他ではウチの会社のことを悪く言うんゃないか」と連想されてしまう。「ほめずに厳しく改善点だけを言う傾向にあった」くらいの表現にすれば、悪口と受け取られずにすむ。


【「伝え方」が超重要】

 「伝え方」ひとつで人事・面接官に好感を持たれたり、反発を招かれたりする。

 一般的に、文章表現は、口が過ぎると「傲慢・自慢」になり、へりくだりすぎると「卑屈」になる。うまく中間の表現ができれば、それが自己PRに適した文章ということになる。

 「傲慢・自慢」と映るか、「卑屈」と映るか、はたまた「いい自己PR」と映るかは、すべて相手の受け取り方いかんにかかっている。性別、年代、タイプの違う人に自分の文章を見せるのは、統計的に見て自分の文章の一字一句が自己PRの範囲に収まっているかどうかを確認するためでもある。

 ちなみに、上の文章では最後の「悪癖」という部分、へりくだりすぎていて、人によっては「卑屈」と受け取られるのではないかと思う。


【自己PRは3つ以上つくる】

 ボクが3つの自己PRをつくってもらっているのは2つの理由からである。

 1、3つあれば、1枚のエントリーシートがほぼ埋められるため。
 2、他の業界、企業を受けるとき、自己PRづくりに困らないように。

 2について。文章を少し変えると同じ自己PRが複数の欄に記入できる。上の自己PRの場合、形をかえれば以下のいずれにも書き込むことができる。

 A 自己PR
 B 打ち込んだこと
 C わたしの特徴
 D 強み・弱み
 E 困難を克服した経験

 書き出しを次のようにする。「打ち込んだこと」であれば「高校時代のテニス部の活動です」、「わたしの特徴」であれば「いい部分をほめて人を引っ張ります」、「強み・弱み」であれば「人のやる気を引き出します」、「困難を克服した経験」であれば「高校時代、険悪な雰囲気だったテニス部の改革に取り組んだことです」。

 3つの自己PRができれば、エントリーシートづくりは格段に楽になる。早めに仕上げると圧倒的に有利だ。

 ただし、普通の人は人事・面接官の視点にかなう自己PRは1つつくるのがやっと。意識の高い人で3つ。超優秀な人でも10コまで、というのが現場の真実である。

 「毎回違うことを面接でPRしたいのですが」という相談をよく受ける。ボクは「つくることができた自己PRの数による」という回答している。手持ちの自己PRが少ないのに、ムリに他のことを言おうとしてもうまくいかない。

 たとえいい題材が見つからなくても、あきらめずに3つを仕上げること。エントリーシートは総合評価なので、柔道の試合のポイントのように、「そこそこの自己PR3つ合わせて一本!」なんていうことも可能だからだ。


【ダメだしを受けることでPRはどんどん洗練されていく】

 大学3年の秋。メモ魔の自己PRがしっくりこなかったため却下。具体的な成果を示せる形につくりなおした。

 ・高校時代のテニス部
 ・ボランティア経験1
 ・ボランティア経験2

<のちにエントリーシートで軽く触れる程度になる自己PR・高校テニス部編>

 「小さなこともできずに、大きなことができるはずがない」
 この言葉を胸にわたしはさまざまな問題に取り組んできました。

 高校生のとき、わたしは部員が100人を超えるテニス部の部長に就任しました。

 当時の部は先輩が後輩に雑用を押し付け、後輩はろくにテニスもできない、といった状態でした。後輩は腐り、部の雰囲気は勝つための集団とはほど遠い、沈んだものでした。まずこの雰囲気から変えようと、わたしはお茶汲みからコート整備まで、すべての雑用を後輩に混じって行うことから始めました。これに対し同学年の者からは、そんな下らない事ではなく練習メニューを考えた方がいい、と反発されました。しかし説得の末、次第に同学年の者も一緒に手伝ってくれるようになりました。

 この事による効果は絶大でした。1年生のやる気が飛躍的に上がったのです。先輩の練習を見る目は熱を帯び、練習後には僕の前に質問の行列ができました。それを見た後輩も、後輩に負けじと練習に励むようになりました。

 結果、以前は県大会にも出場できなかった部が、団体戦で県ベスト8の成績をあげる事ができました。その原動力は間違いなく、3人の1年生レギュラーでした。
 
 わたしは知っています。小さな仕事の価値は、決して小さいものではないことを。

○よい点

 ・PRとしてかなり洗練されている。

 ・「自分の強みを生かして、チームで成果を出す」という人事の視点に合致する。

 ・「小さな積み重ねが大きなシゴトを成就させる」というのはビジネスマンにとっては基本の一つ。その意味で、ピントの合ったPRになっている。

 ・文章に力がある。

○改善点

 ・高校時代のことであって、かなり前のことになっている。
  インパクトがあれば高校時代のことでも構わないが、メインのPRは大学時代のことに変えることが望ましい。

 ・「効果は絶大」といった表現は「自慢」と受け取られる領域に入っている。表現をおさえたほうがいい。


【成果は、最初の状態と最後の状態をともに述べると効果的に伝わる】

 大学4年の1月。周囲の反応がいいことから、大学でのテニスサークルでの活動についての自己PRを作成。以降、高校時代の自己PRは却下してこの自己PRがメインになった。

<どの企業でも評価の高かった自己PR>

 「思い立ったらまず、行動」というわたしのスタンスが、組織の成果につながりました。

 昨年冬、わたしは部員の80%を初心者が占めるテニスサークルの副主将に就任しました。17ある明治大のテニスチームの中で、従来の成績は7、8位ほど。インターハイ出場者を含む多数の経験者を抱えるチームには、どうしても勝つ事ができませんでした。当然と言えば当然の結果です。

 しかし部員達の気持ちは、「もっと上達して、経験者を倒したい」という気概に満ちあふれていました。この気持ちに応えようと、月1回アンケートを実施したり、またテニス用品メーカーと交渉し、プロテニスプレーヤーの方にコーチに来て頂いたこともありました。そして昨年秋の団体戦、私達の努力は、リーグ優勝という形で結実しました。

 「言うは易し、行なうは難し」。行動に移す事の大切さを、わたしは知っています。

○よい点

 ・当初6、7位→最終的にリーグ優勝と、どこからどこまで成長したのかが描写されていて効果的。準優勝→優勝よりも、6、7位→優勝のほうが印象深い。
  スポーツ系のPRでたとえ優勝経験がなくても、「どこからどこまで強くなったのか」その幅が示せれば、十分効果的なPRになる。

 ・この自己PRを読んで改めてYくんを分析すると、確かに行動が速い。Yくんにはぴったりのテーマの自己PRとなった。

 ちなみに、ビジネスでは、企業が生き残るためにスピードは欠かせないものと考えられている。

○改善点

 ・短時間で理解するために、もう一段文章を整理できるといい。

 ・面接で聞かれたいこと、突っ込まれたいことが聞かれるような表現を模索するとよい。


【「1、2、3、」といった整理の仕方は好感を持たれる。頭の中が整理されている「クレバーな印象」になる】

 大学4年の4月。自分史を改めて振り返って、「客層」という表現が、ボクや受講生の胸にヒットした。「何のことだろう?」とたずねずにはいられなくなる。サークル勧誘の際、暗そうな人、つまらなそうにしている人をターゲットにして勧誘。その人たちを明るく、積極的になるように応援すると、忠実なメンバーになってくれるからとのこと。

 このように面接官に突っ込まれるようにちりばめた言葉のことを「地雷」などと呼ぶ。「地雷」とは、自己PRやエントリーシートの中に敷設した「面接官が突っ込みたくなるような言葉やフレーズ」。面接官が質問し、学生がそれに答えると、面接官のハートがバクハツするという寸法だ。注意したいのは、本番の面接で面接官に質問されなければそれは「地雷」とは呼べないということ。模擬面接に取り組むなどして、実際に突っ込まれるのかどうか事前にテストしておく必要がある。

<最終形の自己PR 200字バージョン>

 「まずは動いてみよう」という姿勢。「考える」から「動く」までのスピードこそが、わたしの真骨頂です。テニスサークルの副主将に就任した時、わたしは就任1週間後に以下の「2つの方針」を提案しました。それは、1、まず、新入生勧誘時に「客層」を設定し、集中的に勧誘する事、2、次に、「練習に対するアンケート」を実施し、意見が言える環境を作る事でした。結果、部員は120人に増え、学内リーグ優勝をも遂げることができました。


【「人事の4つの視点」からの講評】

○総合評価☆☆☆☆

 リーダーシップがアピールできる自己PRは強い。

相対評価☆☆☆☆

 「学内リーグ優勝」という成果が具体的に示されていて、他の学生と比べやすい。

○強み、専門能力☆☆☆☆

 「スピード」は、企業活動でも不可欠な要素。強みとしてアピールする。

○リーダーシップ、チームワーク☆☆☆☆

 リーダーシップが発揮されている。副主将就任1週間後に方針が示されるというのはスピーディでよい。

○人事の心が動く☆☆☆

 「顧客の声を大事にする」のが企業活動の基本。アンケートをとってのサークル運営は好感がもてる。

○一言コメント

 「1、2、」などの項目をつけているのでわかりやすい。WEBエントリーの際にはとくに効果的。

 「客層」=面接を想定して、面接で突っ込まれたい「地雷」が盛り込まれている。


【100字あれば自己PRは伝え切れる!】

 自己PRの添削をしていると、「これ以上短くできません!」という悲鳴のような反論をされることがある。内定者たちの例を踏まえて言えば、たとえ100字でもPRは言い切れる。

 たとえば上記の200字PRを100字に縮めるとこうなる。

<最終形の自己PR 100字バージョン>

 「考える」から「動く」までのスピードが強みです。テニスサークルの副主将として2つの方針を提案。1、新入生勧誘時の「客層」設定。2、「練習アンケート」の実施。結果として学内リーグ優勝を達成。

 ちなみに履歴書用の箇条書きならこんな感じだろう。

<履歴書用箇条書きバージョン>

 テニスサークル(副主将として学内リーグ優勝に貢献)


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